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Quattro stagioni
第7章 スタンダールの幸福 Ⅱ
定時を過ぎると部長命令でみな、一斉に業務を終えた。揃って会社を出て4名ずつ3台のタクシーで洒落たイタリアンの店に移動する。店の奥の広い個室を押さえてくれているようでタクシーを降りるや否や、ぞろぞろと店内奥へと進んでいく。
「なんか洒落た店で落ち着かないな。焼肉屋とかの方が良かったんじゃないか」
「店は任せるって部長がおっしゃったんじゃないですか。それに部長御用達の焼肉屋じゃ会費バカ高くなりますよ」
個室の奥の席についた部長がドリンクメニューをひらひらさせながら言うと、すかさずアカネさんが言い返す。ミヤコさんもそれに乗っかって、部長の選ぶ店の方が落ち着きませんよ、と言った。
皆が適当に席について、乾杯の音頭は部長が取った。大きなビールのグラスを掲げて早く飲みたいとばかりの顔の部長は、都筑、後輩いじめるなよ、森、清水、これから頑張ってくれ、と短く言っただけだ。次々に運ばれてくる料理やお酒はみるみるなくなっていった。
見たところわたしと都筑さん以外はみんなかなりお酒が飲めるタイプのようだ。その筆頭の部長は藤さんを隣に従えて豪快な笑い声をあげながらビールを煽っている。
「お酒あんまりだったらここはジュースの種類も多くて美味しいから好きなのどんどん頼んでね」
「ありがとうございます」
「ちょう無礼講だから。鬱憤溜まってるならぶちまけていいからね」
「いや…お前さ、まだ配属されて1ヶ月だぞ。ある訳ないだろ」
最初に座った席から入り乱れ、部長の位置とは正反対の隅で大人しくしているとミヤコさんがソフトドリンクのメニューを片手にわたしの隣に座る。彼女の発言に呆れたように言ったのは村澤さんだった。