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Quattro stagioni
第2章 今宵は、新しいシーツの上で
4人掛けのダイニングテーブル。チカは敢えてなのか斜め向かいに座った。なおもにやにやと笑っている。
一月前事故に遭い、退院の日に藤くんに自分の気持ちを伝えた。ずるずると依存し合うようなセックスばかりしていた私たちは一応は晴れて恋人同士という括りになったのだが、彼はそこを更に越えて籍を入れようと勇んでいた。
どうにかこうにかなだめ賺して、結婚は前提とするもののそれはまだ待って欲しいと言った私に藤くんは一先ず一緒に暮らしたいと私を抱き締めながら言った。
退院してからの日々は目まぐるしかった。チカの策略であの日は藤くんの家へ直帰したが、翌日以降も彼は私を自宅マンションに戻らせたくない様子だった。まあ、無理もない。隣には危険人物・隼人が住んでいたのだ。
結局、私は今日このマンションに越すまでの間に長年守ってきた城へは藤くんというお供つきで数回戻っただけだった。
「チカ、今日泊まってく?お風呂ちょうラグジュアリーだよ。部屋も広いし、ベッドは明日届くからまだないけど…来客用の布団並べてさ、どう?布団もシーツも新品だよ」
「…あんた、ここんとこずっと藤くんと一緒だったから久しぶりにひとりで寝るの不安なんでしょ。部屋無駄に広いし」
「そんなことない」
「目が泳いでる」
「気のせい」
「いい歳して。あーあ、もう藤くん離れ出来ないね。寂しいなら帰ってきてって電話したら?」
「……寂しくないし」
寂しくもないし、不安でもない。私は幼い子供ではないのだ。確かに退院してからこの一月、ずっと藤くんの腕の中で眠っていたし、2LDKの新居は12帖のリビングダイニングと寝室になる8帖の洋室に加えて6帖の洋室というひとりで過ごすには広い間取りだ。
それに藤くんがこだわったベッドは明日届く予定の為、寝室はとにかくがらんとしている。だからといって私は成人女性だ。決して寂しくなど、ない。