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Quattro stagioni
第2章 今宵は、新しいシーツの上で
蕎麦を食べ終え、私の荷物がすっかり片付いたのは20時頃だった。藤くんの荷物の段ボール箱はとりあえず6帖の洋室に置いてある。
生活環境が思いの外あっさり整ってしまったリビングダイニングはやっぱりなんだか広く感じる。大型のテレビとその下の台は藤くんの部屋にあったものだ。ソファーは彼の希望で私の部屋にあったものをそのまま持ってきた。ソファー前のローテーブルもセットだ。
毛足の長めのラグマットは先週、ふたりでショッピングモールに行って一緒に選んだ。ベッドは私の部屋で使っていたものの方が大きいし、それで良いだろうと言ったのだが、彼はそれを頑なに拒んだ。
「よし。片付いたね。じゃ、私、帰るわ」
「え。ちょ、待とうよ。あ、お礼にワイン買ってくるよ。赤でも、白でも。それかスパークリングにする?もう幾らでも買っちゃうよ。飲んで、寝ちゃお」
綺麗に片付いたリビング。ソファーに並んで座って、冷蔵庫とダイニングテーブルも志保の部屋にあったやつにしたんだね、なんて言っていたかと思えばチカは唐突に鞄を手に立ち上がった。慌てて縋りつくとやっぱりにやにや笑いが私を見下ろす。
「寂しい、帰ってきてって電話してごらん」
「だから寂しくないから」
「ふうん?じゃあ、なんでそんなに私に泊まって欲しいのかな?志保ちゃん」
「いや、ほら…チカさまとユウジさんの恋の話を聞きたい的な」
「相変わらずキス止まりですけど楽しくやってます。以上。じゃ、さよなら」
縋りつく私の手を無情にも振り払ってチカはリビングを出ていく。追いかけて廊下を歩きながら、泊まっていきなよ、としつこく言うが返ってくるのはにやけた笑顔だけだった。