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Quattro stagioni
第9章 スタンダールの幸福 Ⅳ

◇◆

「私に出来るアドバイスはね、とりあえず乾杯の挨拶が終わったら速やかに部長と村澤さんから離れることだね」

都筑さんがにこりと笑って言った。先週からオードブルはどこで頼もうかとか、お酒やジュースはなにを用意したら良いかとか、あたふたするわたしに色々と教えてくれた彼女は準備が整ってほっとしたところ、最後のアドバイスだとわたしを呼びとめたのだった。

「俺にもなんかアドバイスないんですか?」
「君はいいよ。存分に飲まされて潰されておいで。でも、片付けも君らの仕事だから美月ちゃんに迷惑かからない程度に飲むんだよ」
「どっちっすか」
「君の良心に任せる」

これくらいあればいいよ、とのアドバイス通り用意したアルコール類は部長から預かった会費の7割を使っていた。都筑さん曰く、お酒は殆ど残らないようでわたしは乾杯前から戦々恐々していたりする。

清水くんはわたしが思うよりお酒が飲めるようで、普段飲んでいる缶ビールよりリッチな銘柄だと準備の段階から今日のこの暑気払いを楽しみにしているようだった。皆の作業が程々に片付いたのを見計らって、ビールを美しく注いだプラスティックのカップ片手に、よし飲むぞー、と部長が声を響かせた。

ゴリラだのなんだのと言われているけれど、なんだかんだ部長は皆に信頼されているようで、彼が場を仕切り始めると皆、飲み物のカップを手に取った。慌ててわたしもオレンジジュースのカップに手を伸ばす。

短い挨拶だった。基本的に長い挨拶を聞いたことのある人は居ないらしい。初めての暑気払いの席はなんだか不思議な飲み会の席で、お酒やジュースを飲みながら会話の花を咲かす人たちに混じって、数人は仕事に戻っていたりする。

ふと中原さんの方を見るとオリーブをつまんでビールを飲みながら険しい顔をしてPCの画面を見つめている。彼は仕事に戻る方の人なのか、と思っていればにやにや笑った村澤さんが遠くから中原さんを呼びよせた。

「なんすか、もう」

そう言って呆れたように笑いながら席を立つ。本当に嫌がっている様子ではなかった。中原さんと入れ替わるような形でわたしはこっそり自分の席についた。清水くんに我侭を言って少し余った会費の中から買わせてもらったクッキーやチョコレート菓子をフロア中央から持ってくることも忘れない。
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