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Quattro stagioni
第9章 スタンダールの幸福 Ⅳ
賑やかな光景をジュースとお菓子をお供に眺めていると都筑さんがやってきて中原さんの席に座った。彼女が持っているのはウーロン茶のカップとオードブルプレートから取ってきたらしいチーズが数種類乗った小皿だった。
「こんな隅っこでどうしたの?あっちでミヤコちゃんたち飲んでるよ」
言いながら都筑さんが示した先では確かにミヤコさんとアカネさんと藤さんが楽しそうにしていた。視線をずらせば部長は清水くんをしっかり捕獲している。
「わたし、みんなが楽しそうにしてるの見てるの好きなんです」
「そうなんだ。お酒は?あんまり飲めない?」
「都筑さんと一緒です。あんまり強くなくて…甘いのしか」
「…?ああ、私、ほんとは飲めるんだけど許しがあるときしか飲まないようにしてるんだ」
照れくさそうに笑って言う顔はいつもの凛とした都筑さんとは違ってなんだか可愛らしい。そうなんですか、と返すとこれまた照れたような顔で、うん、と答える。それからわたしが持ってきたクッキーにさり気なく手を伸ばした。
「ねえ、浩志、ちゃんとやってる?恐かったりとかしない?」
なんとなく、これが本題なのだろうなと思う。ここ最近の都筑さんと中原さんは冷戦状態と言っても過言ではないくらいだったけれど、時々都筑さんが心配そうに中原さんを見ていることには気付いていた。
「恐いっていうか…清水くんと都筑さんみたいに喋ったりしないので仲良しかっていうと微妙ですけど…でも、中原さんはちゃんと見てくれてるし、困ったときすぐに助けてくれるのでわたしは心配事はなにもないです」
「そっか、良かった。浩志はね、確かにぺらぺら喋る方じゃないけど…でも、凄く気持ちの優しい人だから…だから、」
言葉を区切った都筑さんは今度は悲しそうな顔になった。どういう意味だろう。思い違いの可能性はあるけれど、わたしは今でも都筑さんと中原さんは付き合っているんじゃないかと思っている。それでもって、ふたりは今はちょっとだけ喧嘩をしているだけなんじゃないかと。でも、やっぱり違うのだろうか。