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Quattro stagioni
第10章 スタンダールの幸福 Ⅴ

◇◆

1時間に満たない乗車時間の新幹線。遠足のようだと浮かれている清水が場違いに見えるほど、窓際の俺たちの間に漂う空気は殺伐としていた。3人掛けのシートを向い合せ、俺の向かいには都筑、その都筑の隣には森美月。それから俺の隣には藤、清水と続き、最後に森の隣に津田。

当初4名で予定されていたが、案の定、藤がごねにごねたらしく、結局ホテル側に掛け合って藤と津田を加えた6名での視察になった。

正直、視察とは名ばかりだ。最寄駅からのアクセスや、ホテル内の設備、食事などをチェックして、周辺にある程度娯楽になるようなものがあるか見てこいという。面子によってはさぞかし楽しい旅行になったことだろう。費用は会社持ちな上に、出張費まで出るのだから。

出発前から憂鬱な俺を嘲笑うように、よく晴れた土曜の朝だった。ホテルは最寄駅から送迎バスで10分。海へは1分とかからなそうな好立地だ。

重たい空気の新幹線や送迎バスから解放され、最早部屋で寝かせて欲しいくらいだったが、そうもいかない。大きな荷物だけをフロントに預け、周辺を見て回ることになるかと思いきや、珍しく結託した清水と津田の勢いに押され、海に繰り出すことになった。

ちゃっかり水着を持ってきていた女どもと清水が海水浴客用の更衣室へと消えると俺と藤が取り残される。無言でなにもせずにいるのが苦しいのは藤も同じだったのか海の家でビーチパラソルやらなにやらを借りて設置することで気を紛らわせた。何故、俺はせっかくの休日に藤とこんなことをしているのだろう。

「美月ちゃんって凄い着やせするんだね。ちょっと触らせて」
「都筑さん、女同士でもセクハラですよ」
「まじか」
「その前に俺も居るんで、せめて俺が見てないとこでやってくださいよ」
「うわ、ケンシローくんのその目つき…目閉じてくんない?」

賑やかな声が近づいてきたかと思うと、背後から殺気に近いひやりとしたものが襲い掛かってくる。ぎょっと振り返れば、藤が見慣れぬ険しい顔で清水を睨み付けている。
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