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仮初めの恋人
第2章 私のフィアンセ~摂津凪子の依頼~
正確にはいなくなった、と言うのが正しい。
四年間付き合った彼氏、里野幸二朗(さとのこうじろう)とは先月別れたばかりであった。
母が倒れた時、幸二朗に「母と会って貰いたいの」と告げたときの彼の顔は今でも鮮明に思い出せる。
困惑したような濁った引き攣り顔は、見ようによっては笑っているようにも見えたかもしれない。
しかし人の心の機微に敏感な凪子は、その一瞬で彼の心を悟ってしまった。
『彼には私と共に生きていく気持ちがない』ということに。
それまでにもこの人は自分と結婚する気はないということは薄々勘付いていた。
甘い言葉を囁いてくれるのはベッドで一つになるときだけで、結婚式場やブライダルフェアをしているジュエリーショップの前を通るときは白々しいほど関係のない話をしていた。
結婚がテーマの映画やドラマは一切観ないし、話題にも上げない。
でもそんな意識も時を重ねていけば変わると思っていた。
だから深追いはせず、核心に迫るようなことは口に出さずに四年間過ごしてきた。
しかし急を要する事態になり、凪子は思い切って「母に会って欲しい」と切り出した。
四年間付き合った彼氏、里野幸二朗(さとのこうじろう)とは先月別れたばかりであった。
母が倒れた時、幸二朗に「母と会って貰いたいの」と告げたときの彼の顔は今でも鮮明に思い出せる。
困惑したような濁った引き攣り顔は、見ようによっては笑っているようにも見えたかもしれない。
しかし人の心の機微に敏感な凪子は、その一瞬で彼の心を悟ってしまった。
『彼には私と共に生きていく気持ちがない』ということに。
それまでにもこの人は自分と結婚する気はないということは薄々勘付いていた。
甘い言葉を囁いてくれるのはベッドで一つになるときだけで、結婚式場やブライダルフェアをしているジュエリーショップの前を通るときは白々しいほど関係のない話をしていた。
結婚がテーマの映画やドラマは一切観ないし、話題にも上げない。
でもそんな意識も時を重ねていけば変わると思っていた。
だから深追いはせず、核心に迫るようなことは口に出さずに四年間過ごしてきた。
しかし急を要する事態になり、凪子は思い切って「母に会って欲しい」と切り出した。