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仮初めの恋人
第2章 私のフィアンセ~摂津凪子の依頼~
それにも関わらず、凪子の部屋のカレンダーには来週の日曜日には丸がついたままだ。
もう母には「会わせたい人がいる」と伝えていた。
ここで中止にしたらぬか喜びさせた分、余計親不孝になってしまう。
はっと気付き時計を見ると待ち合わせの時間までもうほとんど時間がなかった。
凪子は必要最低限の化粧だけを施し、慌てて部屋を出る。
幸二朗に期待できない今、年老いた母を喜ばせる為には『偽物』でもいい、フィアンセが必要だった。
その偽物の婚約者になってくれる相手と、これから会って話をする。
(「仮初めの恋人」って……やっぱり怪しいところなのかな……)
待ち合わせ場所に向かう最中、今さら不安に駆られていた。
ネットで見つけた怪しげな広告。
彼氏になってくれるという、まともじゃないサービスを請け負ってくれる。それが『仮初めの恋人』だ。
(こんなことするなんて、どうかしてる)
そう分かっていても止められなかった。
母に残された時間はそれほど長くないからだ。
早足で向かう途中、ショーウィンドウに映った自分を見て乱れた髪に気付いた。
(ひどいヘアスタイル……それに……)
薄い眉に薄い唇。大きいが切れ長の一重の目。
痩せていると言うよりは貧相に感じる細い顔。
幸薄そうな女の典型例だと自嘲した。
偽りで恋人になってくれるという怪しげな男に会うだけだ。気取ったところで意味がないか。
そう割り切った彼女は髪を手櫛で整えるのをやめて歩き出した。
もう母には「会わせたい人がいる」と伝えていた。
ここで中止にしたらぬか喜びさせた分、余計親不孝になってしまう。
はっと気付き時計を見ると待ち合わせの時間までもうほとんど時間がなかった。
凪子は必要最低限の化粧だけを施し、慌てて部屋を出る。
幸二朗に期待できない今、年老いた母を喜ばせる為には『偽物』でもいい、フィアンセが必要だった。
その偽物の婚約者になってくれる相手と、これから会って話をする。
(「仮初めの恋人」って……やっぱり怪しいところなのかな……)
待ち合わせ場所に向かう最中、今さら不安に駆られていた。
ネットで見つけた怪しげな広告。
彼氏になってくれるという、まともじゃないサービスを請け負ってくれる。それが『仮初めの恋人』だ。
(こんなことするなんて、どうかしてる)
そう分かっていても止められなかった。
母に残された時間はそれほど長くないからだ。
早足で向かう途中、ショーウィンドウに映った自分を見て乱れた髪に気付いた。
(ひどいヘアスタイル……それに……)
薄い眉に薄い唇。大きいが切れ長の一重の目。
痩せていると言うよりは貧相に感じる細い顔。
幸薄そうな女の典型例だと自嘲した。
偽りで恋人になってくれるという怪しげな男に会うだけだ。気取ったところで意味がないか。
そう割り切った彼女は髪を手櫛で整えるのをやめて歩き出した。