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仮初めの恋人
第2章 私のフィアンセ~摂津凪子の依頼~
「あの、失礼ですけど……あなた以外の人にお願いすることは出来ないんでしょうか?」
「僕じゃ不満ですか?」
「いえ、不満というか……あまりにも幸二朗さんとは違いすぎるので……」

凪子は「すいません」と言って頭を下げる。
本物の里野幸二朗は彼のように美麗な容姿の持ち主ではない。
中肉中背で、顔ももっと丸顔で鼻も低いし目は小さい。
一言で言えば似ても似つかなかった。

「母にも昔幸二朗さんの写真見せたことあるし……」
「写真なんて一度見たくらいでそんなに鮮明に覚えてませんよ」
「まあそうかも知れませんが……」

いくら年老いた母でもボケているわけではない。
ヒョウとチーターは見間違えるかもしれないが、ヒョウとカバを間違えるとは思えなかった。

「それに申し訳ありませんけど交代出来る人はいません。うちは僕一人でやっているもので」
「はあ……そうなんですか……」

失敗したかなと不安に駆られながらも、今となっては彼に賭けるしかなかった。
来週の日曜日まではもうほとんど時間がない。

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