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仮初めの恋人
第2章 私のフィアンセ~摂津凪子の依頼~
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「こんな汚いところに来て貰ってすいませんねぇ、幸二朗さん」
凪子の母、時子は嬉しそうに歯を見せて笑った。
実家は築五十年以上のあばら屋と呼ぶに相応しい一軒家だから、汚いところという時子の説明に間違いはない。
しかし室内は凪子の部屋同様、綺麗に整頓されている。
母は倒れたときよりも更に痩せており、凪子には痛々しかった。
「いえ。素敵なところですね」
そう答える幸二朗はシャドーストライプのスーツに白いシャツ、紺と赤のネクタイを締めている。
取り分けてどうということのない服装だが、サイズが若干ちぐはぐでどこか野暮ったさを感じさせた。
髪型も駅などにある千円調髪で切ってきたような、さっぱりしてるけど冴えない感を醸し出している。
誠実そうだけど垢抜けなく、それが堅実な印象を与える落ち着いた人物。
そんな『幸二朗』を演出してくれていた。
事前に打ち合わせをした時や、肌を重ね合った時の妖しい美しさも、どこか憂いを纏った面影も今は消えている。
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「こんな汚いところに来て貰ってすいませんねぇ、幸二朗さん」
凪子の母、時子は嬉しそうに歯を見せて笑った。
実家は築五十年以上のあばら屋と呼ぶに相応しい一軒家だから、汚いところという時子の説明に間違いはない。
しかし室内は凪子の部屋同様、綺麗に整頓されている。
母は倒れたときよりも更に痩せており、凪子には痛々しかった。
「いえ。素敵なところですね」
そう答える幸二朗はシャドーストライプのスーツに白いシャツ、紺と赤のネクタイを締めている。
取り分けてどうということのない服装だが、サイズが若干ちぐはぐでどこか野暮ったさを感じさせた。
髪型も駅などにある千円調髪で切ってきたような、さっぱりしてるけど冴えない感を醸し出している。
誠実そうだけど垢抜けなく、それが堅実な印象を与える落ち着いた人物。
そんな『幸二朗』を演出してくれていた。
事前に打ち合わせをした時や、肌を重ね合った時の妖しい美しさも、どこか憂いを纏った面影も今は消えている。