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仮初めの恋人
第2章 私のフィアンセ~摂津凪子の依頼~
夕飯の買い出しを口実に二人だけで実家から出たのは日も傾いた頃であった。

「ごめんね、お母さんの話が長すぎて」
「いいって、そんなの。愉しいし」
「やっぱり泊まらずに帰る? 幸二朗だけでも」
「なんで? 僕は愉しいよ?」

凪子は誰もいないが周囲を気にして、少し声を潜める。

「いや、まあ……付き合わせすぎるのも気が引けるというのもあるけど……今のとこお母さん信じ切ってるように見えるし……ボロが出る前に」
「凪子」

二人きりになっても幸二朗は演じるのを一切止めようとしない。

「僕たちはフィアンセだよ。お母さんとお会いできるのもそう何回もあるわけじゃない。大切にしないと」

『相手を信じさせるためには、まず自分自身が疑いを持たずに信じること』

今回のこの作戦にあたり、幸二朗にきつく何度も言われた言葉である。

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