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仮初めの恋人
第2章 私のフィアンセ~摂津凪子の依頼~
母の昔話は夕食の間も途切れることなく続いた。
しかしその姿は娘のフィアンセに聞かせているのではなく、娘である凪子に聞かせているように感じた。

そう思わせた最大の理由は、時子の会話の内容である。
母は昔の話はよくするが、二人の馴れ初めはおろか、幸二朗に対する質問やこれからどうするのかというような質問をほとんどしてこない。
何かに勘付いてるように思えた。

「幸二朗ももう疲れてるから」

風呂上がりに凪子がそう言ったことで、ようやく話は終わった。

二人の布団は居間で寝る母の隣の部屋に敷かれている。

「ありがとう、幸二朗」
「僕の方こそ何だかお世話になりっぱなしで」

布団に入ってから小さな声で囁きあう。
凪子はどうしても母のことが気になって、スマホを手に取り隣で寝る幸二朗にメッセージを送った。

『お母さん、もしかして気付いているかな?』

メッセージを読んだ幸二朗は眉にやや力を籠めていた。
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