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第2章 私のフィアンセ～摂津凪子の依頼～

「これから寒くなってくるんだから身体には気を付けてよね」

二人きりになるとなぜか気まずさも消え、親子二人で生きてきた頃のように自然になれた。

「あんたも気を付けなさいよ」

時子も同じなのか、母親らしい表情で返してくる。

「また来るから、ね」
「いいよ。そんなに何回も来なくったって」

電光掲示板を見ると特急電車は間もなく到着と点滅を始めていた。

あと何回、こうして元気でいられる母と会えるのかと思うと不覚にも目頭が熱くなり、電光掲示板を見上げた顔を下ろせなくなった。

「やっぱりお母さん……一緒に暮らそうよ、私のとこに来て」

顔を上げたまま伝えると時子は娘の方は見ずに笑った。

「無理無理。お母さん都会は苦手だから」

自分の死期は分かっているのか、わざとらしいくらいに明るい母が余計に悲しかった。