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第3章 初めての彼氏～郁野真莉の依頼～

ブヒブヒと豚の真似をしながら机の周りで囃し立てられたり、体育で走る不格好な様をからかわれたりする。
でもイジメに屈したら負けだと思っていた彼女は何を言われても無視を貫いた。

しかしそれがむしろ子供の残酷な集団心理を煽ってしまう。
反応を示さない真莉を見て男子たちはイジメが足りないと感じたのか『バイ菌』呼ばわりが始まり、庇ってくれていた女子達も次第に真莉を少し汚いもののように扱い始めた。

そのイジメは結局二年ほどで終わったのだが、多感な時期にそんな扱いを受けた真莉の心に深い傷と闇を生み出してしまう。
中学になってもあまり積極的に人と関わろうとはせず、教師は発達障害というブラックボックスに彼女を押し込めて「自分は理解を持って接している」と自己満足しているように感じた。

当時は今みたいに心のケアについて真剣に取り組む社会ではなかった。
加えて根幹になったイジメは小学校時代の数年前のことだし、誰かが首謀者だったわけでもなく、外傷なども一切残っていない。
そうなってしまえば誰に責任があるわけでもなく、彼女が内向的で人とのコミュニケーションが上手く取れないのはいつの間にか『自己責任』ということにさせられてしまっていた。