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仮初めの恋人
第3章 初めての彼氏~郁野真莉の依頼~
「入って……」
「えっ……」

そこは最上階のレストランではなかった。

「ここって……」
「部屋を取っておいたんだ」
「ホ、ホテルの部屋って……」

シックなホテルの客室フロアで大声を出すのも恥ずかしく、真莉は仕方なく部屋へと足を踏み入れた。

「ビールでいい? それともワイン?」

秋希は微笑みながら冷蔵庫の飲み物を手に取って勧めてくる。

真莉は小説の中で、秋希が口に含んだワインをヒロインに飲ませる描写があったのを思い出した。

「ミネラルウォーターで……」

素っ気なく言うと彼は嫌な顔一つせず、キリリッと封を切り、ボトルを手渡してくれる。

「ありがとう」

それを受け取ると真莉はそのまま仰ぐように口をつけた。

冷たい水が喉を通り、胃袋に落ちるのを感じると少しだけ落ち着きを取り戻す。
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