パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第31章 家出

静かな車内は、ラジオの音楽だけが聞こえる


この曲。。。


聞き覚えのある曲に、懐かしさを感じた

付き合っていた時に一緒に、イヤホンを片方ずつで一緒に聞いた

別れる時にも流れていた


「この曲。。。懐かしいな？」


気づいた拓人が話しかけてくる


「別れる時も、部屋で流れてたわ。。。」


嫌みたらしく拓人に言うと、口角が上がる


「覚えてたんだ？」


「まあね。。。

だから、この曲聞くと別れたあの日を思い出す。。。」


拓人の方は見ないで返事していく


「そうだな。。。だから忘れられない。。。だろ？」


「拓人は、ズルいね

何で、タクシーが来るのがわかったの？」


「何となくな。。。？

行く宛もないのに、勝手にどこに行くつもりだ？

海人のことを考えたら、出来ないはずだ。。。」


「っ。。。

ずいぶんな言い方だよね。。。

少し、健人と距離を置きたいだけよ。。。」


車が停まり、私を見ているのがわかる


「少しだけ？」


「少しだけよ。。。？」


車の扉が開いて、私を引っ張っていく


「少しだけなら、帰れるよな？」


見慣れた実家のチャイムを拓人が鳴らしていくのが見える


「拓人っ？

やめてっ？」


朝、４時だ

両親はまだ寝ているだろう。。。


「実家以外に、家出するなら海人は置いていけ。。。？

母親だろ？

少しは海人のことを考えろっ」


3度目のチャイムが鳴ると、隣の家の犬の声や電気がついていく


ガチャリと、扉が開いて、怒ったお母さんがいた


「もうっ？何時だと思ってるの？」


拓人が、頭を下げて私を押していく


「しばらく家出するみたいです

お願いします。。。

しばらく見張っていてくれませんか？

こいつ勝手にどこかに行こうとしてて。。。

お願いします。。。」


お母さんが呆れた顔で、私を見ている


「海人が風邪ひくわ。。。

入りなさい。。。？

たっくん、ありがとう。。。

帰って大丈夫よ。。。

後で健人くんに電話させるから。。。？」


何度も頭を下げて拓人は帰って行った

お母さんが私を見る


「美海の部屋。。。掃除してあるわ。。。」


お母さんが何も聞かないで部屋に荷物を運んでいくのを、ぼんやりと見ていた