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僕は、ヱッチな小説を書キてゐゑ
第9章 コンテスト受賞作の作り方

卒業のとき、胸に花をつけたまま死人の様な表情で校門を出て行こうとした私を呼び止めて、ムー先生が頭を下げた。

「……すまなかった。何の力にもなってやれなかった」

そのときの事だけはハッキリと憶えている。

両手を揃えた90度のお辞儀で、頭を下げたままピクリとも動かない恩師。
大人にそんなふうに頭を下げられたのは初めてのことだ。

私は無表情なままポツリと言った。

「……大人が子供に謝らないで下さいよ」

もう一度。今度は叩きつけるように怒鳴った。リミッターが外れた声量で。

「大人が子供に謝らないで下さいよ!」

ムー先生は何も言い返すことなく、ただ頭を垂れていた。

その情景は、私のした最悪の責任転嫁の仕打ちは、今も頭に残っている。
忘れることができないまま。





須股さんは翌年、ようやく念願のコンクールへの挑戦を果たした。
最後のチャレンジだった。ティコたち他の三年生は引退していたが彼女は残っていたのだ。

しかし、やはり地区大会落ちだったそうだ。

私も、OBとなっていた同級生たちに誘われてその舞台を見に行った。
傷も少しは癒えていたのかもしれない。

だが、そんなことはなかった。

上演が始まる直前、客席の照明が落ちた瞬間、私を襲ったのはあの得も言われぬ感情だった。

後悔とも恐怖とも絶望とも悲しさとも無常さとも愛おしさとも情けなさともつかぬわけのわからない感情。全身の毛穴が開き、激しい嘔吐感が胃の底から込み上げた。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した私は、二度と……もう二度と、かつての仲間たちと顔を合わせようとは思わなかった。


もともと仲間なんていなかったのかもしれない。


何かを、誰かを、恨むことができればよかったのかもしれない。
夢を持たない人間が、夢持つ人間を邪魔してはいけなかったのかもしれない。

ただ自分を責めて、大切なことを、大切な人たちのことすら忘れて、私は全てから心を閉ざした。いや、心を失ったのかもしれない。


そうしなければ、どうにかなってしまいそうだったから。







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