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僕は、ヱッチな小説を書キてゐゑ
第9章 コンテスト受賞作の作り方
■境界

痛み、苦しみ、優しい笑顔。

その境界はいつも曖昧で、常にひとつの塊のようになって訪れた。

曖昧なのは言葉を知らないから。
言葉を知らないから概念が形を持たない。

これはなんだろう?
どういうことだろう?
なにがおきているんだろう?

そんな疑問すら、言葉を知らなければ形をとらない。
口にすることができない。

伝えるべきなのに。
伝えたいのに。

たとえば、耳たぶに走った激痛。
僕は、泣き叫ぶ。よしよしと抱いてくれるのは優しいせんせい。
お母さんと似た匂いをしている温かく柔らかな胸。
僕が泣き止むのを待って爪切りをつづけてくれる。

たとえば、鼻を突き抜ける苦しみ。
僕は、もがく。ごぼこぼと口からこぼれるあぶくを追いかけて。
見上げれば二本の塔のようにそびえ立つせんせいの青白く艶めかしい脚。
僕の首を押さえて浮かび上がらないように助けてくれる。

痛み、苦しみ、優しい笑顔。
それがエロティックであると、生と死の境界を知らぬまま本能に刻む。

ユウくんが突然駆け出して慌てて転んでしまって。
あらあらこの子ったら。

ユウくんはぷーるでまだ顔を水につけるのを怖がるみたいです。
いつもごめんどうをおかけします。

ちがうんだよ、ちがう。お母さんちがうよ。
何かが違う。

伝えなければならない。
でも、どう伝えればいいかわからない。

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