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霞草
第7章 すれ違い
「霞、味比べするのにバニラにしなくていいの?」
彼女は、ブルーベリー味を買っていた。
「美味しそうだったから、バニラの味見させて?」
僕が返事をする前に、彼女は僕のソフトクリームを舐める。
「美味しい、違いがわかるかしら。」
僕は、無言で彼女の舐めたソフトクリームを見つめる。
間接キス?
この後を僕は食べていいのだろうか。
彼女は全く気にしていないようで、
「食べないと溶けちゃうよ。」
「ああ…」
僕も意識するのをやめて食べる。美味しいがドキドキしてよく味がわからない。
「ブルーベリーも美味しいよ。」
彼女は、自分の食べているソフトクリームを傾けて、こっちにつきだす。
僕はまた、気にしていないふりをして、紫色のそれを味わう。
しかし、鼓動と共に、口内に拡がる甘酸っぱさが、ブルーベリーの味なのかどうかなどわからなかった。
顔が赤くなっている気がして、落ち着かず、無心でソフトクリームを頬張るふりをして、彼女の視線を避けた。
「牧場のソフトクリームを食べて、味比べ出来るかしら…」
「うーん、後から食べた方が美味しいと感じるかな。」
「じゃあ、帰りにもう一度食べる?」