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傘の雨
第2章 2.空が海
人並みを掻き分けて走ってきたのは結鶴だった。

走るの苦手なのに。

「は、にっ…よか…た、はぁ、これ」

差し出されたのは小さな紙袋。

中を開けるとネックレスが入っていた。

アクセサリーを作るのを趣味にしている結鶴。

手のひらに出すと、それはシンプルなシルバーのチェーンネックレスだった。

「頑張ってね」

傷だらけの指と、乱れた髪型と、薄ら隈まで作ってコレを?

「仕事は?」

「…初めて仮病使った」

えへへと笑う結鶴に、胸がぎゅっとなる。

抱きしめたい、抱きしめて…でも、それは今じゃない。

「ありがと…俺頑張るね」

キツく手のひらを握って、結鶴の笑顔を目に焼き付けた。


渡韓し、待っていたのはレッスン漬けの毎日だった。

ダンスして韓国語の勉強して、ダンスしてボーカルトレーニングして、ダンスしてご飯食べてダンスして…今が何日の、何曜日の、何時なのかもわからなくなるくらい。

「ジナ、昨日のダンス良かったぞ」

褒められることも増えたけれど、辛いことも増えた。

結鶴に会えないし。

「それ、誰にやられた?」

見上げたそこには同じ練習生が2人。

1人は英語堪能の日本人、小林理登と韓国系アメリカ人のユン・ジェド。

「それ、初めてじゃないだろ?」
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