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傘の雨
第2章 2.空が海
クタクタの体を引きずってレッスン室を出る。

今日はちょっと早い上がりだ。

練習生と何を食べるか話しながらの帰り道。

頬に冷りと白いものが舞う。

「雪だー初雪じゃない?」

こちらの初雪はロマンチックなジンクスが多い。

街頭に向けてスマホをかざして写真を撮ると、すぐに送った。

次の信号までに既読になって、綺麗だねと返事がきた。

「もしもし?」

『ハニ?寒くない?』

「全然、初雪…『だれ?』…」

男の声。

こんな時間に?

「誰かと一緒だった…?」

『うん、彼氏なの』

「……邪魔してごめん」

『ハニと話せるのなんて滅多にないんだから、気にしないで』

気にする。気にするに決まってる。

何を話したか覚えてないけど、素っ気なくまたねって切った後、初めての彼氏じゃないって頭を振った。

高校の時にも、大学生の時も、結鶴には彼氏がいた。

すぐ別れたりもしたから、今回で4人目くらいだろうか。

さっきまできらきらして見えた雪もただ寒さを感じるだけのものになってしまう。

ストリートミュージシャンがキーボードとギターを弾いていた。

こんな時にそれかよってくらい有名な失恋ソング。

俺は引き寄せられるようにそこへ向かう。

どれだけ悲壮な顔をしていたのか、ボーカルがマイクを差し出してくれた。
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