この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
淫の館
第6章 脱走

ジジッ…ジジッ…
見ているのも辛くて、再び目を瞑る。
男の指が押さえる位置でどれほど進んだかがわかった。
女の命と言っておきながら、それを奪う男。
そう、私はもう、逃げる道を絶たれて、死んだのだ。
悔しくて、悲しくて、涙が溢れ続けた。
ジジッ…ジジッ…プツッ…
剃り落とした毛束を男が掴んだようだ。
「箱を…
箱にしまって命をもらう。
見納めになるぞ、見なくていいのか?」
目を開けると、弟子が長い桐の箱を差し出していて、男が掴んでいた毛束を納めた。
それが凄く長く感じたのは根元からの長さだからだ。
桐の箱に和紙の紙がのし紙のように貼られ、『下』と書かれた。
とうに失った名前とともに命が封印された。

