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第35章 邂逅

丁度その頃、沢渡と千尋はリビングでお互い何も言わず無言のまま、深刻な表情を浮かべていた。

沢渡は今日観戦していた総合格闘技のメインの試合の事を思い出していた。

沢渡がメインの試合でサントスのセコンドに付いていた長身の日本人を見て、思わず席から立ち上がった。

(あれは達也くんじゃないか？)

沢渡は呆然とサントスのセコンドを見ていた。

【Não quebre o guarda!(ガードを崩すな！)】

【Ataque de forma mais agressiva!(もっとアグレッシブに攻めろ！)】

ポルトガル語でリングサイドからアドバイスを送っていたが、あれは間違いなく達也だ、沢渡は思いがけない場で達也を目撃した。

(間違いない、あの顔と声は達也くんだ！)

「おじさん、おじさん！」

亮輔の声でハッと我に返った。

「おじさん、急に立ち上がってどうしたんですか？」

亮輔の問いかけに沢渡は一瞬言葉に詰まった。

(あのセコンドについてる人が亮輔の兄の達也だと今言うべきか否か)