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アナザーストーリー【快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体】特別編
第35章 邂逅
沢渡は葛藤していた。

せっかくの観戦中にその事を言っていいものかどうか…

(とりあえず今はまだ何も言わないでおこう)

沢渡は試合ではなく、セコンドでサントスにアドバイスを送る達也に釘付けになっていた。

確か最後に会ったのは中学を卒業してすぐの頃だった。

あれから10年近く経つ、沢渡の友人で達也の父親でもある立花の話だと、達也はコロンビアに帰国後、ハイスクールに通い、ブラジルのリオデジャネイロ近郊にある大学の商業学部貿易科に進学したらしい。

だが、達也が何故コロンビアの大学ではなく、わざわざブラジルの大学へ進学したのか、理由を聞いても中々答えてくれない。

しかもその大学の近郊はリオデジャネイロでもかなりのスラム街として有名で、父親は達也がブラジルに行く事を反対した。

だが達也の決意は固く、反対を押しきるような形でブラジルへ渡った。

父親は一抹の不安を感じていた。
リオデジャネイロはかつて父親がコロンビアの貿易会社で知り合った女性の出身地だった。

やがて父親はその女性と恋に落ち、結婚の約束まで交わした。

そして生まれたのが達也だ。

だがその女性は父親とは婚姻関係を結ばず、一緒に暮らし達也を育てたが、頑なに入籍を拒んだ。

理由を聞いても一切口を開かない。
婚姻関係を結ぶのがイヤならば仕方ない、ただ一緒に暮らして達也を育てよう、父親は女性を事実上の妻として母として一緒に暮らした。


沢渡が達也の事について知っているのはこのぐらいだ。

最近は立花とも連絡を取ってない。
多忙なのか、この2年程連絡を何度か入れたが、繋がらない。

その事もあって、沢渡は試合が終った後に控え室に行って確かめてみよう、そう思い、試合終了と同時に沢渡は席を立ち、一足先に控え室前でサントスやセコンドの達也が来るのを待っていた。

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