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アナザーストーリー【快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体】特別編
第37章 亮輔は私たちの子供なのよ!
千尋のマンションに着いた沢渡は運転手に懐から数万円を渡し

「今日は遅くなるからこれでタクシーでも拾って帰りなさい」と告げた。

千尋の部屋で酔いが醒めるまで話をしようと思った。

「あら、沢渡さん。亮輔と一緒じゃなかったの?」

ドアを開け、開口一番千尋が沢渡一人でここに来たので、これは何かある、と千尋は察した。

「亮輔くんは試合が終わった後に選手や関係者含めて打ち上げみたいな事に参加しててね。
それより今日思いがけない人物に会ったよ」

沢渡は玄関で靴を脱ぎ、リビングのソファーに座り、ネクタイを緩めた。

「思いがけない人物って?」

千尋は沢渡にお茶を出しながら誰の事なのか頭の中でそれらしき人物を浮かべていた。

沢渡はお茶を一口飲んで一呼吸置いてから口を開いた。

「達也くんだよ。しかも選手のセコンドとしてね。どうやらブラジルに住んでるらしい」

達也…千尋の表情が一瞬険しくなった。

「まさかその事を亮輔は…」

千尋は亮輔に兄がいたという事は以前に話したが、今は何処で何をしているのか全く知らないと言って、亮輔の前では達也の事を話すのは極力控えていた。

「いや~、ビックリしたよ。試合そっちのけでセコンドの彼に釘付けになっちゃったよ」

「そんな事より亮輔には話をしたの?」

千尋の顔色がみるみるうちに青ざめてきた。

亮輔がまだ生まれる前の頃の話だ。
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