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アナザーストーリー【快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体】特別編
第37章 亮輔は私たちの子供なのよ!
ふーん、という感じでタバコを灰皿に揉み消して千尋は立ち上がり、冷蔵庫から缶ビールを2本取り出し、沢渡に渡した。
プシュッとプルタブを開け、グラスに注がず、缶のままグイっと飲んだ。
「それが私と何の関係があるの?あれからもう20年近く経ってるのよ。私の事なんて覚えてないんじゃないかしら…
沢渡さんの思い違いなんじゃないの?」
千尋は私には関係ない、とばかりな口調で話を続けた。
「それに例えば外であの子とバッタリ会ったとしてもお互い顔なんて覚えてないはずよ。
そりゃ沢渡さんはあの子が中学を卒業するまで見てきたから分かるけど、私なんて5才の時に離ればなれになってるし、成長した顔なんて分かるはずが無いじゃない?」
沢渡はビールを一口飲んで色々と頭の中で考えていた。
「この話、亮輔くんには言うつもりか?」
「まさか、こんな事絶対言わないわよ。あなたのお兄ちゃんが見つかったわって言ってどうするつもり?」
千尋は何があっても亮輔の前で達也の事を言うつもりは無いらしい。
「…そうか。いや、一瞬迷ったんだよ。亮輔くんに言うべきかどうか。だが言えなかった…それにあの二人を近づけてはいけないような気がする…ただの思い過ごしならいいんだが」
フゥとため息をつきながら沢渡は亮輔に達也を会わせるのを止めようと思った。
あのタダ者ではない雰囲気…
「とにかくあの二人は兄弟だったというのはほんの僅かな期間だけよ。離れてしまえば赤の他人…それに亮輔は私たちの子供なのよ。もしそんな不気味な人間になっていたら余計に会わせるなんて反対よ!」
千尋が言った【亮輔は私たちの子供なのよ】
亮輔の本当の父親は沢渡だった。