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アナザーストーリー【快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体】特別編
第57章 たかがキスごときで
パエリアもサフランの香りやムール貝、野菜もいい具合に炊き上がって、ケチのつけようの無い逸品だ。

「ちょっと亮ちゃん、急いで食べ過ぎ!
寒いのは分かるけど、もっとゆっくり食べようよ」

あまりの食べる早さに楓はてっきりさっさと食べてすぐに立ち去ろう、と勘違いしてるみたいだ。

「いや、美味いんだよ!美味いと手が止まらない」

口をモグモグさせながらオレはパエリアを一心不乱に食い続けた。

楓は両足の間にお尻を落として座る座り方【女の子座り】でゆっくりとパエリアを食べている。

しかし、こういうのが画になるというか、楓は女子力が高い。

よく見るとメイクも学校の時と違い、アイプチをして、薄い唇には淡いピンクのルージュをひいている。

自分を見せるのが上手いのか、それとも雑誌とか見て研究でもしてるんだろうか?

こんな女子がオレの彼女だなんて、勿体ないぐらいだ。

そして弁当を食べ終わり、オレたちは少し砂浜を歩いた。

「寒いけど、何だかこういうのって良いよね」

楓はコートの袖からかじかんだ手を出してハァーっと息を吐きかけた。

オレは楓の手を握った。冷たい手だ。

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