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第63章 オープニングセレモニー

息を切らせながら、いつものシックなブラウンのスリーピースを着こなし、楓の隣の席に着こうとした。

楓とヒロトは立ち上がり、おじさんに挨拶した。

「あの、はじめまして、私及川楓と言います。
亮輔くんに頼み込んでどうしてもこの試合を観に行きたくて、その為にわざわざこんな高い席を取ってくださって、ありがとうございます」

「お久しぶりです。今回もリングサイド最前列なんて、スゲー幸せです。ありがとうございます」

二人ともおじさんに深々とお辞儀をした。

「いやいや。えーっと貴女が楓さんかな？はじめまして、彼の父親代わりをしている沢渡です。
亮輔くん、こんな可愛いお嬢さんが彼女だなんて、随分と羨ましいなぁ。
あれ？ヒロトくんまた太ったんじゃないか？」

おじさんは楓に挨拶し、ヒロトの肥えた身体を見て、笑っていた。

「いや、そんな事ないすよ。ちょっとだけ体重が増えただけっす…」

「だからお前は食いすぎなんだよ。また大学でMMAサークル作って身体鍛えようか、お前のダイエットも兼ねて」

ヒロトは100キロを越えているはずだ。

とにかく、よく食べる。食欲があるのはいいけど、気がすむまで腹一杯食べて、ゴロンと横になる。まるで相撲取り並みだ。


「ところで楓さんは格闘技ファンなのかな？」