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第23章 やや憂鬱な夏休み

「じゃあ、小久保さん。しばらく実家に帰りますのでよろしくお願いします」

皆、寮長と呼ばすに【小久保さん】と呼んでいる。

「おう、二学期になったらちゃんと戻ってこいよ。やっぱり実家の方がいいって戻ってこなくならないようにな、ワハハハ」

小久保さんは笑い飛ばしながらオレを送り出した。

オレは玄関で靴を履き替え、目の前に停まっている黒く光る高級車の後部座席からおじさんが降りてきた。

「久しぶりだな、しばらく見ないうちに少し背が伸びたんじゃないか？」

おじさんは仕事の途中なのか、運転手付きの車でしかもスリーピースの高級なスーツ姿だ。

左手には数百万はするだろう、高級ブランドの腕時計をしている。

「おじさん、ご無沙汰しています」

それにひきかえ、オレは夏らしくラフな格好で、プリントの入ったシャツと膝元までの長さのデニムに、オレが一番こだわりを見せている有名スポーツブランドのスニーカーを履いたスタイルだ。

しかも運転手付きの車で迎えに来るとは…

運転手はメガネをかけ、細身のスーツを着こなしている、賢そうな感じのする若い人だった。

「思ったより高速が渋滞して少し時間がかかってしまって思ったより遅くなってしまった。さぁ、早く乗りなさい」

おじさんは後部座席のドアを開け、オレを座らせた。

おじさんは助手席に座り、車は寮を後にした。

「どうだ、寮生活は？」

おじさんは後ろを振り向き、寮生活の様子を聞いてきた。

「えぇ、思ったよりうるさいところじゃなくて、皆と仲良くやってます。部屋の連中とはしょっちゅう色んな話をして、クラスでもこれといった問題もなくやってます。
オレ、あの学校に入って良かったなって思いました。
おじさん、色々とありがとうございました」

オレはおじさんに深々と頭を下げた。

宇棚の件は置いといて、あの学校に入って良かったと思っている。

広大な土地を生かした広い校舎に、居心地の良い寮。