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遠い日の約束。
第3章 言い伝え
上手く笑えただろうか。
子供ができない身体でも、なんとでもないと言うように私は笑えたのだろうか。
……きっと笑えてない。
俊樹さんの顔を見てそう思った。
苦痛に歪む顔がそれを物語っている。

「子供ができにくりだけでしょう?全く産めない身体ではないなら避妊はするべき。…もっと自分を大切にして」

今までだって避妊なんてしなかった。
だけど一度も妊娠したことはない。
それが答えだと私は思っていた。
相手にそのことを告げると避妊をしなくていいことにみんな喜んだ。
それが普通でそれが当たり前だと思っていた。

「それに…そういうことを笑って言うのはダメ。無理に笑わなくても良い」

私の顔は歪み、涙が溢れ出し、我慢することもなく嗚咽を漏らしながら泣いた。
それは、誰かに言ってほしかった言葉だった。

「我慢が続けば、どこかで必ず綻びが生じる。私の前では無理しなくてもいい。ありのままの華でいい」

欲しかった言葉が次から次へと降ってくる。
春馬でさえ気づいてくれなかった私の本心を分かってくれた。
初めて私の本心に寄り添う人に出会えた気がした。

「腕を首にまわして。」

涙が止まらない中、言われたまま首に手を回す。

「ちゃんと掴まってて」

そういうと、私の膝の後ろに腕を回して軽々と抱き上げる。
テントに戻り、マミー形のシュラフの上に座らされる。

「足だけでも入れて待っていて」

そう言ってテントを出ていった。
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