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遠い日の約束。
第3章 言い伝え
─…
──…
───…
寝返りを打ち、そこにいるはずの人がいないことに気がついて目が覚めた。
時計を見ると8時を回っていた。
慌てて身体を起こすと、少し頭が痛い。
昨晩、飲みすぎたと少し反省する。
シュラフから出てダウンを羽織ってテントから出ると、リンとした冷たさが頬に触れる。
俊樹さんは、ローチェアーに座り湖を眺めていた。
近くまで寄って声を掛ける。
「おはようございます」
ゆっくりと振り向き、私を確認すると優しく微笑んで手を差し伸べる。
今までだったら躊躇していた私も、今日は素直にその手を取り引っ張られるままに俊樹さんの膝の中に座り込む。
後ろから抱きしめられ、その温もりが私を包み込み安心する。
「頭、痛くない?」
頭の上から聞こえてくる優しい声。
そして何もかも見透かされている私…
「少し…飲みすぎたみたい…」
寝る直前の事をあまり覚えていない。
口移しで飲まされている所までは辛うじて覚えている。
もっと欲しいと身体が疼き求めそうになったのを覚えている。
だけどいつ眠ったのか…覚えていなかった。
「覚えていない…失礼な事してない?」
顔を上げて彼を見て聞くと、フッと笑った。
「大丈夫だよ。ワインを飲ませながら、そのまま眠りについてしまっただけだから」
「ワインが美味してく…飲みすぎてしまったみたい…」
「また飲ませてあげるよ。口移しで」
ポンッと言う音が聞こえ、一瞬にして耳まで赤くなる。