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遠い日の約束。
第3章 言い伝え
顔を合わせられない私は前を向いて縮こまり両手で顔を隠した。
言われて期待している自分がいた。
あのワインと蜜が混ざり合った媚薬みたいな味を思い出しただけで私の中心部分が疼き始めた。
こんなに人を欲しいと思ったことが初めてで困惑しながらも、俊樹さんに抱かれたいと強く思うようになっていた。

「そろそろ朝食の準備でもしようか」

恥ずかしがっている私を立たせて、朝食の準備を始めた。
夕食と同様に何も手伝える事がなかった。
ローチェアーに座り、俊樹さんの動きを飽きることなく見入っていた。
手際よく朝食が出来上がる。
ホットサンドと昨晩作った燻製を使ったサラダとコーヒーがテーブルに並べられた。

「「いただきます」」

2人で手を合わせていただく。
昨日と同様おいしくて、冷えた身体に暖かいものは幸せなひと時を運んでくる。
全てを綺麗に食べ終わり、しばらくは動かずただ湖を眺めていた。
時たま吹き抜ける風が湖に波を立たせ吹き去っていく。

「ここは時が止まっている様に感じるんだ…美弥も葉月も、どんな思いでこの湖を見てたのか…」

湖を見続けていた俊樹さんが寂しそうにつぶやいた。
愛している者同士、見れたらいいと思う。
ここが死ぬだけの場所じゃないことを祈った。
愛し愛されふたりの想い出の場所ならいいのにと、まだ知らぬ昔の人を思った。
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