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遠い日の約束。
第4章 本当の気持ち
お手洗いを出て席に戻ろうとすると、カウンターの中から大将が手招きをして空いている席を進めてくれる。
なんだろうと行ってみると、冷たい水を一杯出してくれた。

「ほどほどに…」

見た目は怖そうな大将が、目じりを下げて笑った。

「あの…」

「ああ。さっき飲み物を運んで行ったときに、部長さんが水を渡してくれって頼んだらしいから。気が利く部長さんだね」

部長の方を見てみると、部長と目が合った。
そして片手を顔の前に持っていき「すまん」と口を開くのが分かった。
私は軽く会釈だけしてカウンターに座り氷水を流し込んだ。
そして何をするでもなく大将の包丁さばきを見てると意外と面白い。
自由自在に包丁を操り、きれいなお造りを作り上げていく。

「はい。どうぞ」

私の横から手が伸びて鰆の西京漬けが出された。

「向こうで食べるよりこっちがいいでしょう?」

わざわざ私の分をカウンターに運んでくれたようだった。
これも部長の計らいなのか…
後ろを振り向いても部長と目が合うこともなく盛り上がっている。
少し寂しく思いながら、一人の方が気が楽かなと思い直しカウンターで、西京漬けに箸をつけた。
少し焦がした皮が香ばしく、日本酒が欲しくなる。

「少しならいいかな?」

そう言って、絶妙なタイミングでグラスに入った日本酒を出してくれた。
少し飲んでみると先ほどよりアルコール度数が低く、甘さも控えめで西京漬けにぴったりな日本酒だった。
こおやって、お酒が好きになっていくのかと思いながら出される食事を一人で食べていた。

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