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遠い日の約束。
第6章 伝えたい想い
そこに一台の車が止まっており、その前にいたスーツ姿の男性が私たちに近づく。

「立花さまでいらっしゃいますか?」

俊樹さんに向かって一礼をして問いかける。

「はい。そうです。旅館の方ですか?」

「はい。蕩尽宿場(とうじんしゅくば)の加藤と申します。長旅おつかれだったでしょう?これから車で20分程で当旅館につきますので、もうしばらくおつきあいくださいませ。お荷物、お持ちいたします」

立花さんの荷物を受け取り車に乗せ、蕩尽宿場に向かって車は走り出した。
何もない田園風景。

「何もない場所でございましょう?」

「ゆっくりと時間が流れてますね」

「そうですね。急かされることなく自然に恵まれて、この上ない贅沢だと思っております」

車は時速30㌔程で動いているのに遅いと感じることもない程、本当にのんびりと過ぎていた。
田園風景が木々が生い茂る森へと様変わりする。
傍では渓流が流れ木漏れ日が光っていた。
それを抜けると車は止まった。
大きな藁ぶき屋根の母屋のようだった。
玄関先には仲居さんが数名で迎えて、私たちが降りればきれいに一礼する。
それだけで分かるほど、ハイクラスな旅館だと思った。

「ようこそ、おいでくださいました。とりあえずは中に入っておくつろぎくださいませ」
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