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遠い日の約束。
第8章 嫉妬と不安
嘘をついていいことなんて一つもない。
仮に私に非があっても、後でばれた時の方が尾を引いてしまう。
だったら、ここに迎えに来てもらった方が何もないと俊樹に知ってもらえる。
私はそこまで考えも及ばなかった。
ただ、今、この時だけの事しか考えていなかった。

「華…こっち向けよ…一緒に飲んでるのに寂しい」

春馬の手が反対側の頬に触れ、グッと春馬の方に向けられた。
そこには真剣に私を見る春馬がいた。
昔だったらこのまま唇が重なって愛を囁き幸せな時が待っていた。
だけど今は違う。
ドキドキはしても先に進みたいのは春馬じゃない。
私を愛してほしいのは俊樹だけ。

「良い表情するようになったな…華…きれいになった」

少し寂しそうに笑った。

「あのっ…春馬―――」

「その手、除けてもらえますか?」

私の声を遮って俊樹の声が耳に届いた。
振り返ると、そこには少し機嫌の悪い俊樹が立っていた。

「華、帰るよ」

隣のバースツールに置いているバックを手に取り私の腕を取る。

「意外と早かったな…どんだけ心配なんだよ」

春馬が煽るように俊樹に言い放ち、テーブルの上に置いてある私のスマホを奪った。

「人質」

にっこり笑って告げる春馬とは対照的に今まで見たことのない形相で春馬を睨みつける俊樹。
一発即発の事態に私はなすすべもなくふたりの顔を交互に見てることしかできなかった。
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