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遠い日の約束。
第10章 記憶の破片
「ひざ掛け持ってきたからか使ってください」

俊樹は春馬を押し退けて、私の膝の上にひざ掛けをかけてくれた。
これは私がいつも社内で使っているやつで、持ってこようと思って忘れてきた物だった。

「これ…忘れてきてたんです…ありがとうございます。」

機嫌を直してもらうべく、笑顔で伝えるといつもの表情になった。
このままキスをしたいと思ってるのはきっと私だけじゃない。
だけど今はできない事がもどかしくて顔を背けた。
そんな私と俊樹の気持ちに気がつくのはさすがというべきか、春馬だった。

「高宮…先にごはん食べに行くぞ!」

「えっ…お弁当ありますよ?」

「あほ。草野が寒いって言ってるだろう?交代でつきあってやるから暖かい飯くいに行くぞ」

引きずるようにして春馬が高宮くんを連れ出した。
残された私たちは顔を見合わせて笑った。
普通、寒いと言った私を先にいかせるべきでしょうと…
だけど、ふたりっきりにさせてくれたことに感謝した。
俊樹をからかいながらも私たちを認めて陰で気を使ってくれる。

「後でお礼いわないとね」

「…」
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