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遠い日の約束。
第10章 記憶の破片
キスをしたくて唇を寄せようとすると、頭に手を添えられ春馬の胸に引き込まれる。

「もう少しで立花の家だ…それまで我慢しろ。このまま流されて傷つくのは華だぞ」

「待てない…春馬…待てないよ…」

泣きながら春馬の名前を呼んでも、抱きしめるだけで私の欲しい言葉は返ってこない。

「春馬…抱いて…前みたいに抱いて」

縋り付く思いで言いながらキスをしようと、春馬の顔に近づく。
顔を歪めながらも、春馬は顔を背けることをしない。
あと少し…
あと少しで、キスができる。

「はる…ま…」

「流されるな!!」

ガバッと私の頭を抱えるようにして抱きしめる。
ギュッと力強く抱きしめられ、それが快感に変る。

「アッ…はるっ…春馬…」

甘美な声をあげながら身体は一気にかけあがる。
イキたい…
この腕の中でイキ狂いたい。

「辛いだろうが我慢しろ。快楽に負けて俺に抱かれようと思うな…辛い未来が待ってるだけだぞ」

春馬の言いたいことは分かる。
分かるけど…もう我慢できない。
春馬から身体を離して春馬を見る。
歪んだ表情が、ともて寂しい。
私のせいでこんな顔をさせてる。
だけど、ごめんね。
欲望には勝てない。
震える手でボタンを外してく。
震えているから中々外れなくてイライラしてくる。
その手を春馬は優しく包んでくれる。
顔を上げると、優しい表情で私を見つめ、頬を撫でる。
身体はビクッと反応して息が荒くなる。
もっと触ってと、春馬の手を取り、自分の胸に誘導する。
もう、ここがタクシーの中だと分かっていない。
この疼きが止まるなら、なんだってよかった。
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