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遠い日の約束。
第11章 情と愛
頷けば、春馬は私を抱く。
そしてもう戻ることは叶わない。



…戻ることは許されない。



脳裏に蘇るのは俊樹の笑顔であり、いつも心配している表情だった。
『華?』と不安げに私の名を呼ぶ俊樹の声が好きだった。
毎日身体を重ね合わせて、愛をささやかれ、無条件に私を愛してくれる俊樹が大好きで、愛していた。

「それが答え…どんなに言葉で言っても、身体はそれを受け入れない…愛と情を間違えるなよ。」

どうして私の心が分かるのだろうと思っていると、頬に温かいものを感じた。
私は知らず知らずのうちに涙を流していた。

「俺は…華の幸せを奪いたくはない…今ならまだ戻れるから…帰りな」

優しく微笑む春馬は、いつもの春馬だった。
だけど、どうやって帰って良いのか分からない。
かかってきた電話を切って電源も落としている。
情でここにいたとしても、裏切ったのは変りはない。
考えていると、春馬の小さな溜息が耳に入ってきた。
そしておもむろにスマホをいじり、耳に当てた。
誰に電話をしてるのだろうと思いながら、私はソファーに座ったまま何も考えられずにいた。
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