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遠い日の約束。
第11章 情と愛
もし…今日抱いてくれないのなら、黙って出て行こうと決めていた。
それだけ、私の事を許せずにいると思ったから。
愛しているのに許せないでいる俊樹の想いが不憫でならなかった。

「きちんと向き合うから…逃げないで華と向き合うから…だから…」

握りしめる腕に力が入り、その先の言葉が声になることはなかった。
だから私の方から告げる。
どこにもいかないと。

「…うん…待ってる…。ちゃんとこの部屋で待ってるから…きちんと話そう?」

「…華…」

力なく私の名を呼ぶ。
その弱々しい俊樹に心が揺らぐ。
自分の犯した罪も忘れて、俊樹と共に生きていきたいと思ってしまう。
だけど、それに流されるわけにはいかない。
俊樹の事が大事だから、全てをなかったことにして共に生きていくことはできなかった。

『情と愛を間違えるな。』

春馬が言ったように、それは紙一重だと思う。
あの時は春馬が可哀想に思えてひとりにはできなかった。
今まで、ずっと傍にいて私を暖かいもので包んでくれていた。
その中にいれば幸せで嫌な事なんて考えもしなかった。
だけど俊樹は、俊樹の心を守りたいと思った。
私が幸せになるためではなく、俊樹を幸せにするために別れようと決めた。
その時に気がついた。
本当に愛しているのは俊樹なのだと。
春馬ではなく俊樹を愛しているのだと。
だけど、気がつくのが遅すぎた…
たくさん傷つけて泣かせてしまった。
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