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遠い日の約束。
第15章 残された者の哀しみ
和尚は慌てて2人の脈を取ってみたが、波打脈はなかった。
それは死を意味していた。
南和に何があったのか問いただしても何も話さない。
ただ、ふたりの頬を撫でながら静かに涙を流していた。
南和の腕からふたりを離そうとした時に、腰と手に巻いてある帯を見て全てを理解した。
ふたりは自ら命をたったのだと物語っていた。
なぜ、南和がふたりを抱きしめているのか色々と聞きたいことがあったが、南和をみて諦めるしかなかった。
鉄斎と妙仁にふたりを運ばせ、和尚は南和を連れて寺に戻った。
途中会った蓬黎に両家族を呼びに行かせ、6人は寺に急ぎ帰った。
南和を風呂に入れ、葉月と美弥の着物を着せ替えさせ布団に寝かせた。
一緒に逝ったからなのか安らかな表情だった。
苦しんだ美弥が幸せになれる道。
それは一つの選択かもしれない。
けれど、残された者の悲しみを考えると『よかったな』とは言えなかった。
その証拠に、慌てて駆け付けた美弥の両親は、変わり果てた美弥を見て言葉もなかった。
父親は声を殺して泣き、母親はあまりの出来事に気を失った。
麻耶はただ震えて美弥が死んだことを理解できていないようだった。
葉月の両親も同様だった。
その日の夜は悲しみに満ちた忘れられない夜となった。
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