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遠い日の約束。
第15章 残された者の哀しみ
あれから8年。
母様の記憶は変わらず、美弥は生きて幸せに暮らしていることになっていた。
麻耶は布団に横たわる母親の傍に座り、母様の手を握る。

『母様…』

『麻耶…ごめんね…寂しい思いばかりさせて…でも、あなたが私の娘でよかった。最後まで一緒に過ごせてよかった…』

弱々しく母様は口にする。

『何を気弱な事を言っているんだ。麻耶にはまだまだお前が必要だろう?美弥だって…子供が生まれたら子守をしてやらんと』

父様の頬に一筋の涙零れ落ちた。

『そうね…もうすぐ、美弥も母親になるのね…』

瞳を閉じて、今はいない美弥を思い浮かべる。
その瞳の奥に浮かぶのは、お腹の大きな美弥の姿だった。

『あなた…私を…愛してくれてありがとうございます。 美弥と麻耶を身籠れて、私の人生は幸せでした。』

父様と麻耶と蘭子に囲まれて最後の時を過ごす。

『ああ…俺も幸せだったよ…』

父様は涙を拭いて、笑顔で答えた。

『ばーば…』

蘭子が母様の手を握りしめる。

『蘭子…あなたが生まれた時、誰もが喜んだのよ。あなたが幸せを運んできてくれたの…これからは母様と一緒に幸せに生きてね』

『うん…母様と生きていく…』
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