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遠い日の約束。
第15章 残された者の哀しみ
『ううん…私が…横入りをしてしまったの…初めから姉様と葉月は愛し合っていた。結婚の約束までしていたふたりの仲を裂いたのは私…私がもっと大人だったら…みんな幸せになれてたの。私が幼稚で我儘だったから…みんなに辛い思いばかりさせたの…』
父様の盃にお酒を注ぎながら思っている言葉を口にする。
『みんな優しい…あんな事をしたのに誰も責めたりせずに暖かく見守ってくれた。だから今を生きられている…蘭子と幸せに…。…私だけがこの世に残ってる…』
『…残された者は辛いな…死ぬより辛いのかもしれん…。何度死にたいと思ったから分からない…美弥が死に、あいつが死に…なぜ一緒に逝けないのか嘆いた時もある。それでも生きているのには意味があると思って生きてきた…だけど、俺の寿命もつきようとしてる…』
『父様…』
父様の気弱な言葉に麻耶は言葉を無くす。
だけど、その言葉が嘘ではないことを麻耶は気がついていた。
『俺が生きてきたのは麻耶の傍にいるためだと思っている。全てをひとりで背負うのは辛すぎる。自分の仕出かした事にせよ、前を向いて歩いて行こうとしている麻耶をひとりにさせるわけにはいかなかった。母様は心を病み…それどころではなかった。逆に、麻耶が母様を面倒見る形にもなった…だから俺が、ここにいる必要があったんだと思う』
父様は麻耶の頭に手を添えて、自分の胸に引き寄せて抱きしめた。
父様の盃にお酒を注ぎながら思っている言葉を口にする。
『みんな優しい…あんな事をしたのに誰も責めたりせずに暖かく見守ってくれた。だから今を生きられている…蘭子と幸せに…。…私だけがこの世に残ってる…』
『…残された者は辛いな…死ぬより辛いのかもしれん…。何度死にたいと思ったから分からない…美弥が死に、あいつが死に…なぜ一緒に逝けないのか嘆いた時もある。それでも生きているのには意味があると思って生きてきた…だけど、俺の寿命もつきようとしてる…』
『父様…』
父様の気弱な言葉に麻耶は言葉を無くす。
だけど、その言葉が嘘ではないことを麻耶は気がついていた。
『俺が生きてきたのは麻耶の傍にいるためだと思っている。全てをひとりで背負うのは辛すぎる。自分の仕出かした事にせよ、前を向いて歩いて行こうとしている麻耶をひとりにさせるわけにはいかなかった。母様は心を病み…それどころではなかった。逆に、麻耶が母様を面倒見る形にもなった…だから俺が、ここにいる必要があったんだと思う』
父様は麻耶の頭に手を添えて、自分の胸に引き寄せて抱きしめた。