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遠い日の約束。
第15章 残された者の哀しみ
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誰もいなくなった部屋にぽつりと南和はいた。
世の中に取り残されたように、その部屋を訪れる者は誰もいなかった。
南和はただ何をするでもなく、障子を締めきった暗闇の中で身体を小さく丸くして毎日を過ごしていた。
和尚が顔を出しても口を開こうとはしなかった。
そして何も口にはせず、出された食事に手を付けることはなかった。
このままでは身体は衰弱していくだけだと分かっていてもどうすることもできなかった。
そのまま死んでしまえばいいと、心にもない事を言う人たちもいた。
僧侶の中にもそう思う者も少なくはなかった。
しかし、和尚は南和に生きることを強いた。
残された者が逝ってしまった人たちの分まで生きることが償いなのだと説得する。
それでも南和は心を閉ざしたまま衰弱していく一方だった。
『南和…』
誰も近寄らない南和の部屋に足を向けたのは麻耶だった。
麻耶もまた憔悴しきっており、今にも倒れてしまいそうなほど痩せこけていた。
そんな身体をおしてまで寺に来たのは南和の為。
部屋の隅で丸くなっている南和に声をかけても身動き一つしない南和に近づき、肩に手を置くと、怯えたかのように縮こまる。
『南和…』
名前を呼んで南和の手をぎゅっと握ると、恐る恐る顔を上げた。
その弱々しい瞳に麻耶は言葉がなかった。