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遠い日の約束。
第15章 残された者の哀しみ
美弥が亡くなって数年。
誰の心も、まだ癒されていない。

『それより南和は?いつも通りですか?』

『何も変わりはしない…』

そう言いながら中に入ろうとし、柱の陰にいる南和を見つけた。

『南和、おはよう』

麻耶はいつものように挨拶をした。
しかし、南和はいつものように麻耶に抱き付くことをしなかった。

『南和どうしたの?何かあったの?』

南和の傍に行き、手を取って優しく聞いた。
瞳をキョロキョロさせて視線が定まっていなかった。

『…今の…おばさん…何しに来たの…?』

母様が現れたことによって何かが変わろうとしていた。
ただ幸せだった時に閉じこもった南和の心に亀裂が入ろうとする。

『麻耶…どうして…美弥や葉月は会いに来てくれないの?』

この数年、一度も姿を現さない美弥と葉月に疑問を抱く。
抱くことのなかった疑問が湧き上がってくる。

『僕の事…嫌いになった?…母さんや父さんみたいに…僕…いらない…子?』

麻耶が握りしめている南和の手が、きつく結ばれた。
そしてガタガタと震えだす。

『ねぇ…僕…いらない…子?死んじゃえばいい子?』

『南和?』

明らかにおかしな言動に麻耶も和尚も困惑する。

―――ガシャン

ちょうどその時、寺の奥から何かが割れる音が響き渡る。
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