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遠い日の約束。
第15章 残された者の哀しみ
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あれは…まだ5歳にもならない子供だったころ。
麻耶と美弥と葉月は良く一緒に遊んだ。
誰もいない湖を秘密基地として毎日楽しく遊んでいた。
そんなある日。
その秘密基地にひとりの男がうずくまって泣いていた。
『大丈夫?』
美弥が声をかけると、男の子は怯えて泣きじゃくりながら言った。
『ぶたないで…痛い事…もうしないで…』
三人は顔を見合わせ、男の子を抱きしめて美弥は告げた。
『ぶたないよ…私たちは君の味方…酷い事もしない。だから…怖がらないで…』
男の子は美弥の裾をギュッと掴んで、声をあげて泣いた。
止まることのない涙は永遠と流れ出すのではないかと心配するほどだった。
けれど、三人が交互に抱きしめ背中を擦り傍にいれば、自然と涙は止まる。
『どうして泣いてたの?』
葉月が男の子に聞くと、また瞳に涙をためて震えだした。
発した言葉と震える身体を見てただ事ではないと子供心に感じていた。
『大丈夫。みんな君の味方…理由が分からないと助けられないよ?』
優しく聞いても理由を言うことはなかった。
しかし一番年長の葉月は薄々気がついていた。
男の子の身体に残る無数の傷跡。
そして汚れた着物を見て、両親に折檻されているのだろうと想像できた。
『僕、葉月って言うんだ。こっちが美弥で、こっちが麻耶。双子なんだよ。美弥がお姉さんね。で、キミの名前は?』
気がついてしまった葉月は何も聞かない事にした。
聞いたところで男の子が話すことないと分かっていたから。