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遠い日の約束。
第15章 残された者の哀しみ
こうなることはどこかで気がついていて、それでも傍にいさせることを選んだ。
誰が悪いのか…
それを考えると簡単に切り捨てることなどできなかった。

『人を傷つけることは御仏に背く行い…されど我々は人…感情のままに流される時もある…御仏は過ちを犯した人間を切り捨てるか?そうではあるまい…正しき道に導く…それが御仏の心…ゆっくりと自分の心と対話するといい…美弥を思い苦しんだ思いも全て御仏に聞いていただけばよい』

最後の言葉に妙仁は顔を上げた。
その先には、優しく微笑む和尚の顔が妙仁を見つめていた。

『…はい…』

全てを見透かされていると思った妙仁は素直に頷き本堂に足を向けた。
目の前に佇む慈悲深い御仏に向かって、心の中の全てを吐き出し許しを請う。
御仏に使える身でありながら美弥に恋心を抱き、嫉妬と怒りに狂ってしまった自分を戒める。
そんな妙仁を和尚と鉄斎は静かに見守っていた。

『南和は落ち着いたのか?』

『はい…ですが混乱しているようです…これからの南和が心配です…』

南和の手当てをしていた時のことを思い出しながら鉄斎は顔をしかめて難しい顔をする。

『そうか…ふたりから目を離さない方がいいみたいだな…早まった気を起こさねばいいが…』

和尚はふたりのこれからを思うと心穏やかではいられなかった。
美弥と葉月の死の影響がこれからもたらすことを考えれば御仏に祈るしかない。
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