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遠い日の約束。
第15章 残された者の哀しみ
前だったら喜んで抱かれた。
寂しさを紛らわすために、誰かに構ってほしくて南和の誘いに乗って何度も抱かれた。
だけど、今は流されるわけにはいかなかった。

『ほらっ…麻耶は僕と一緒にいたいっていいながら抱かれることを拒絶する…そこに愛なんて存在しない…だったら一緒にいる意味なんてないよ』

抱かれたいから一緒にいるわけではない。
だけど、南和はそこに固執する。
交わることが愛すること、愛されることだと思っていた。

『…いいよ…南和…麻耶を抱いて…』

それで南和の心が救われるのなら抱かれても良いと麻耶は思った。
だから私ではなく麻耶と自分の事を呼ぶ。
その言葉に、南和は無言で手を伸ばして麻耶に触れた。
この温もりに触れるのはいつぶりだろうと南和は考えるが、思い出せないほど遠く感じた。
南和はそっと顔を近づけて唇を重ねた。
触れるだけの口づけに、震えているのが分かる。
麻耶はいつものように唇を少し開き、南和の舌を受け入れようとする。
だけど、いつものように南和の舌が麻耶の舌と絡まることはなかった。
どうしたのかと瞳を開いてみると、閉じている南和の瞳から涙が流れ落ちていた。
それが何を意味するのか麻耶には分からない。
ゆっくりと唇を離した。

『どうしたの?』

麻耶が聞くと、南和は何も言わずに麻耶を抱きしめた。
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