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第3章 言い伝え

静けさだけが車内に流れ息苦しさを感じ始めた頃、車はサービスエリアの中へ入って行き、人目のつかない端っこに車は停車した。

「華？」

シートベルトをはずす気配がし、私はそのまま立花さんを無視してしまった。

「ごめん…悪ふざけしすぎたね…」

元気のない声に申しわけなく思えてくる。
こんなに怒ることでもないってことも分かっている。
だけど、どう折り合いをつけていいのか分からなくなっていた。

「…本当に…帰りたい？」

せつなそうな声に、不謹慎にもキュンとしてしまった。
いつも堂々としていて、人に優しい人の弱った声は反則に近い。

「華？何か言ってくれないと分からないよ」

手が私の髪の毛に触れた。
そして優しく撫でる。

「華？」

何も話そうとしない私にもう一度声をかけてくれるが、何も話さなかった。
話さないというか話せなかった。
そんな気まずい空気の中、立花さんの溜息が耳に入ってくる。
撫でていた手がポンポンと頭を叩き、立花さんはシートベルトをする。

「ここに降ろして行けないから…帰ろうか」

「あっ…」

ギアを入れて本当に帰ろうとしている立花さんに驚き、私は咄嗟に声をあげ彼の方に顔を向けた。
いつも以上に穏やかで、それでいて寂しそうな瞳に吸い込まれそうになる。

「華？」

ギアを戻して私の方に身体ごと向けて、優しく私の名前を呼ぶ。