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遠い日の約束。
第3章 言い伝え
「帰りたいわけじゃないんです…本当に怒っているわけでもない…ただ…」

「うん…」

言葉が中々でてこない私に、急かすことなく待っていてくれる。

「立花さんは…アメリカ育ちで普通かもしれないけど……自分から……することは恥ずかしい…それなのに小馬鹿にするみたいに笑われて…」

言いながら涙が零れそうになる。
そんな大したことじゃないのに、立花さんの前だと自分が弱くなった気がしてしょうがない。

「…ごめん…なさい」

もう、どうしたらいいのか分からなくて謝るしかできなかった。
カチャカチャとシートベルトが外される音がした。
それと同時に、ふわっと抱きしめられる。

「私の方こそ、ごめん…小馬鹿にしたわけじゃないんだ。恥ずかしがる華を見て、かわいいと思った。かわいいから…いじめたくなった…」

抱いている手を解いて、私の顔を覗き込み、流れ出そうになる涙をそっと拭いてくれた。

「…それ…子供じゃないですか・・・好きな子程いじめたくなるような…」

「そうかも」

私の言葉に、プッ噴き出して漸く立花さんの笑顔が輝く。
萎れた花のような表情もドキリとはしたけど、やっぱり笑顔が一番ドキドキすると改めて感じた。

「キャンプ…行きましょう?」

「その前に…仲直りの…」

と言って、キスをする。
触れるだけの軽いキス。

「じゃあ、行こうか」

何もなかったかのように車は発進する。
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