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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
招待客らが、順番に礼也と光に挨拶をし、薫に声をかけてゆく。
北白川伯爵家の二人の美しき令嬢が目を輝かせて、薫に挨拶する。
梨央が優しく声をかける。
「薫ちゃま、大きくなったわね!」
「…まあ、随分ハンサムな乳母だこと。いいわねえ、薫ちゃま」
綾香が悪戯っぽく泉に声をかける。
綾香の色っぽい眼差しにたじたじになる泉だ。
光が笑いながら、二人の後ろに控える月城に目配せする。
「…月城の弟の泉よ」
梨央と綾香は驚く。
「まあ!そうなの?」
「月城、貴方何も言わないから…」
月城は氷のように冴え冴えした美貌を眉ひとつ動かさず答える。
「…私的なことですので…」
泉は肩を竦めた。
暁は小さく笑い、ちらりと月城を見る。
…月城の視線が動いたのはその時だけだった。
兄の怜悧な瞳に温かい温度が宿るのを、泉は初めて見たのだ。
…それからは数限りない招待客が挨拶に押し寄せ、泉はともすれば愚図りそうになる薫を、ひたすらあやしまくり、宥めることに終始した。
「君はやはり凄い。…私なら既に泣き喚かれていたよ」
礼也が隣から賞賛を送ってくれた。
終盤に、その夫妻は近づいて来た。
泉は、ふと暁の表情が一瞬強張るのを見て取り、不思議に思ったのだ。
礼也はその夫妻に手を挙げて、笑顔を投げかけた。
「春馬!…絢子さんも…。よく来てくれましたね」
大紋春馬は笑いながら礼也に手を差し出す。
「おめでとう、礼也、光さん…ああ、薫くん!大きくなったね」
大紋は薫を抱いている泉を見上げ、意外そうな貌をした。
「…君は…」
「月城の弟だ。去年の秋からうちに来たのだ。…薫がとても懐いていてね。今日もナニーの代役を頼んだのさ」
礼也が楽しそうに笑いつつ説明する。
「…そう…月城の…」
大紋は礼也の傍にひっそりと佇む暁を見つめる。
暁はそっと視線を外す。
大紋の隣に寄り添うように立つ夫人の絢子が薫を見つめ、微笑む。
「…まあ、なんて美しい赤ちゃんなんでしょう!…うちの暁人の同じ頃よりずっと大きくてしっかりしていらっしゃるみたい」
暁の肩がびくりと震える。
大紋がさり気なく泉から薫を抱き上げ、あやす。
「本当だ。美形の赤ちゃんだな。礼也に似てきたかな?光さんかな?」
光が無邪気に答える。
「それがね、暁さんに似てきたのよ。月城も、泉もそういうの」
…大紋が、はっとしたように薫の貌を見つめる。
北白川伯爵家の二人の美しき令嬢が目を輝かせて、薫に挨拶する。
梨央が優しく声をかける。
「薫ちゃま、大きくなったわね!」
「…まあ、随分ハンサムな乳母だこと。いいわねえ、薫ちゃま」
綾香が悪戯っぽく泉に声をかける。
綾香の色っぽい眼差しにたじたじになる泉だ。
光が笑いながら、二人の後ろに控える月城に目配せする。
「…月城の弟の泉よ」
梨央と綾香は驚く。
「まあ!そうなの?」
「月城、貴方何も言わないから…」
月城は氷のように冴え冴えした美貌を眉ひとつ動かさず答える。
「…私的なことですので…」
泉は肩を竦めた。
暁は小さく笑い、ちらりと月城を見る。
…月城の視線が動いたのはその時だけだった。
兄の怜悧な瞳に温かい温度が宿るのを、泉は初めて見たのだ。
…それからは数限りない招待客が挨拶に押し寄せ、泉はともすれば愚図りそうになる薫を、ひたすらあやしまくり、宥めることに終始した。
「君はやはり凄い。…私なら既に泣き喚かれていたよ」
礼也が隣から賞賛を送ってくれた。
終盤に、その夫妻は近づいて来た。
泉は、ふと暁の表情が一瞬強張るのを見て取り、不思議に思ったのだ。
礼也はその夫妻に手を挙げて、笑顔を投げかけた。
「春馬!…絢子さんも…。よく来てくれましたね」
大紋春馬は笑いながら礼也に手を差し出す。
「おめでとう、礼也、光さん…ああ、薫くん!大きくなったね」
大紋は薫を抱いている泉を見上げ、意外そうな貌をした。
「…君は…」
「月城の弟だ。去年の秋からうちに来たのだ。…薫がとても懐いていてね。今日もナニーの代役を頼んだのさ」
礼也が楽しそうに笑いつつ説明する。
「…そう…月城の…」
大紋は礼也の傍にひっそりと佇む暁を見つめる。
暁はそっと視線を外す。
大紋の隣に寄り添うように立つ夫人の絢子が薫を見つめ、微笑む。
「…まあ、なんて美しい赤ちゃんなんでしょう!…うちの暁人の同じ頃よりずっと大きくてしっかりしていらっしゃるみたい」
暁の肩がびくりと震える。
大紋がさり気なく泉から薫を抱き上げ、あやす。
「本当だ。美形の赤ちゃんだな。礼也に似てきたかな?光さんかな?」
光が無邪気に答える。
「それがね、暁さんに似てきたのよ。月城も、泉もそういうの」
…大紋が、はっとしたように薫の貌を見つめる。